厄除け日記 (by Kばやし)

厄除けのように、好きなことを集めて書きます。 30代。 俳号は軽囃子(けいばやし)

カテゴリ: 俳句

老舗和菓子屋のY本さん、電気屋のK保さん、大学のサークル仲間のM坂君、H君、そして私(Kばやし)、計五人で俳句の旅。俳句を作りながら旅をし、夜、宴会をしながら句会するという年に一度恒例になった吟行です。今回の目的地は岐阜県高山市。

メンバーが作った俳句を重ねながら、吟行を振り返ってみることにします。


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1日目。

朝、松本駅で全員集合。

一年ぶりの再会。お互いの冴えない顔を見ただけで、それぞれが一年前となんの変わりもないことが察知され、近況を聞くまでもないと悟ったのです。

それぞれが当たり前のように「どうも」と言い合い、車に乗り込みました。

《この秋もいつもと同じ句会かな H


松本から高山へ向かうため峠を越えます。まっ盛りの紅葉を眺めながらのドライブ。

コロナ渦ではありますが、マスクや消毒など対策をすれば旅行をしてもよかろうと、社会の雰囲気が変わってきました。

H君から「お題として『マスク』で一句詠みましょう」との提案があり私は車窓を眺めながら句作します。

こんなのはどうだろう。

《マスクの旅フォドフォドにならいいコロナ♪ Kばやし》

小林旭の「自動車ショー歌」から本歌取り(笑)。あまりにヒドイ句ですが早々と一句できました。

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「ジャガジャガ飲むのもフォドフォドに♪ここらでやめてもいいコロナ♪」(うしろの五木ひろしがノリノリ)


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高山の町へ入ります。山の中に町が現れたような印象です。

交通の便の悪い町にもかかわらず、高山の古い町並みは人でごった返していました。

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まずは高山陣屋へ。マスクの山岡鉄舟とマスクの私たち。

さすが一流観光地、施設のコロナ対策はばっちりです。

《(検温にて詠める)マスクして帽子とったら手でOK K保》


もともと高山陣屋は、幕府の出張所でした。高山は豊富な木材資源や鉱物、交通の要所であったことから、幕府直轄の天領だったのです。なるほど文化的で豊かな町なわけです。


陣屋の庭は手入れがゆきとどき赤く染まったもみじが美しく映えます。

拭き清められた縁側や座敷、お白州などを見学。

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お白州には拷問道具まで展示されていました。

《間男が黙秘の白州もみじ落つ Kばやし》


落ち着いた町並みをぞろぞろ歩きます。秋の空気は澄み、町の中心を流れる宮川は透きとおっていました。

《高山路川床やさし秋の虹 Y本》


散策しながらときどき店をひやかし、日本酒の試飲、名物のラーメンを食べたり、工芸品を眺めたり。

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静かな町並みに入ると、黒い一台の車とすれ違いました。

《秋の川助手席で遺影抱いており M坂》

澄んだ川の水のようにスーッと浮ついた心が冷めていきます。


次に高山祭屋台会館へ。櫻山八幡宮の手前にある施設です。

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豪華絢爛な山車の展示を見て、つくづく豊かな町だったのだなあと実感されます。

《秋社マネキンどもが曳く屋台 H


高山市は木工の名人、左甚五郎の生まれた地とされています。甚五郎という地酒もあるようです。

落語にも左甚五郎はたびたび登場。落語の中では、甚五郎の彫った水仙が花を咲かせたり、ねずみが動き出したり、甚五郎の彫ったものには命が宿るのです。

《この地球(ほし)も甚五郎作天高し  Kばやし》


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光ミュージアムへ。

光ミュージアムを、Y本さんが「轟くピラミッド」と比喩したのですが、まさに巨大怪建築。しみじみとした町に突如要塞が現れたという印象。


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巨大な建物のエントランスにはどういうわけか「宇宙桜」が植えられており、なんだかちぐはぐな感じ。

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異様なミュージアムの中へ入ると、エスカレーターで地下三階へ。巨大遺跡で宝探しをするインディージョーズのような気分になります。

ミュージアムは、まさに宝の山。地下のフロアには洋の東西を問わず、マネやゴッホ、北斎など有名な画家による絵画がごろごろ。書、刀剣、能舞台から現代美術まで脈絡なく展示されており、なんなんだここは・・・と混乱が始まります。

上のフロアへ昇ると、人類史コーナーと称しこれ、また脈絡もなく世界中あちこちの遺跡から発掘された貴重な石器や鉄器、石像、衣類、そして恐竜の化石までが並んでいます。学芸員さんいわく「ホンモノです」。かと思うと、ぬいぐるみや記念写真パネルがあったり・・・。

ベルトコンベアのように次から次へとお宝の前を通り過ぎていくのですが、巨大ミュージアムの出口はいっこうに現れません。インディージョーズも途方にくれました。

《回廊の出口はありや秋深き Y本》


お宝の絨毯爆撃のような威圧的な展示は強烈すぎて違和感を覚えました。

《宇宙桜の下は絵画の墓場なり M坂》

西行の「願わくは花の下にて春死なん」のパロディに笑ってしまいました。


実はこのミュージアム、新興宗教が運営しているのです。誇示するような展示に違和感を感じるのは必然なのかもしれません。言い換えれば、宗教の恐るべき資金力に脱帽させられもするのです。


一番上のフロアには、ラグビーボール状の不思議な形の部屋があり、いぶかしげに入室。

この部屋の中では、話し声や足音が異様に反響するのです。押し寄せる波ように耳元で音がうなり続けます。

その部屋の中心に、金色に輝く教祖(恰幅のいい初老の男)の像が立っていました。神々しい金の像にギョッとし、背筋がヒヤッとします。

かつて教祖が一室の座敷で説法したところから、この宗教は始まったと展示パネルに書かれていました。教祖の話術(言葉)によって宗教や神話が生み出され、たった1代でこのような宗教的世界(ミュージアムなど)を具現化させてしまう凄さ。考えてみるとあっぱれです。


《豊作や教祖の妾が七、八人 Kばやし》

もちろんフィクションです(いまにして思うと「教団X」という小説を読んだばかりだったからこんな不敬な句が浮かんだのかもしれません・・・)。


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日も暮れて、高山市街にある郷土料理屋へ。

酒や肴を楽しみながら、句会が始まります。

長野と岐阜はひとつ峠を挟んでいるだけなのですが、食文化が違い、また話し言葉もガラッと変わります。

《マスク越しの西の言葉や秋の旅 M坂》


今回の句会は、M坂君の圧勝。

全員から景品を独り占めして、お開きになりました。


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二日目。


光ミュージアムに驚愕した私たちは、この宗教の総本山も近所にあるとのことゆえ、見学することにしました。

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総本山もミュージアムをしのぐ贅をこらした巨大怪建築でした。


車を降り施設に入ろうとすると、誘導係「どこの道場からいらっしゃったのですか?」

なるほど、信者でない一般人が観光や参拝に来ることはほとんどないのだろうと、そのとき察知しました。

受付係の方たちの案内を受け、総本山の内部へ。施設の方々は皆とても親切かつ丁寧、ときおり機械的で恐いくらいでしたが、だからこそ、ふとみせる笑顔にはキュンとなりました。

内部は聖地ゆえ写真撮影禁止で詳しくは書きませんが、あまりの絢爛さに人間の信仰の凄まじさを痛感させられることは間違いありません。

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この施設を見学した帰り道、人間っていうのはなんて摩訶不思議な生き物なんだろうか、ということが頭の中でぐるぐる巡っていました。


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最後の目的地「合掌造り集落 飛騨の里」へ。

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小高い丘の上にある、茅葺き屋根の民家を移築し集めた施設です。昔ながらの暮らしを感じることができます。

施設内に投句用紙があり、「記念に投句して下さい」との看板。一句ひねりながら見学することにしました。


「飛騨の里」から町を見下ろすと、宗教の総本山を眺めることができました。

《高い空映しきる金色(こんじき)の屋根 Kばやし》


新興宗教のピカピカな巨大建築とは対照的に、「飛騨の里」には、小さな石仏や社が立っていました。信仰としては変わりないとも言えるし、対極とも言えます。

茅葺き住居の中も見学できます。

《黒ずんだ小さき神棚里の秋 Kばやし》


Y本さん「Kばやしさん、俳句できた?」

「全然できてません」と私は嘘をつきました。

ケレン味たっぷりの作り物の俳句(句会で発表したような句)とは違い、私なりにマジメに作った俳句は人にお伝えするのに照れてしまうのです。


《仕事とは生きることなり薪を割る Kばやし》


たまの旅行はいいものだなあ。文章を書くのもいいものだなあ。

旅のあとはまた、いつもの暮らしが始まります。


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書き出したら楽しくなり長くなってしまいました。キリがないのでこのへんで終わりにしましょう。

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「ここらでやめてもいいコロナ♪」



※一部俳句は修正しました。
※一部写真はK保さんにいただいたものです。
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木曽へ吟行(俳句の旅)に行った話は、前回書きました。

その吟行から帰ってきて気がついたことがあったので、今回はそのことについて書こうと思います。


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その前に、私たちの句会のルールについて説明したいと思います。

先日の、木曽路を観光したあと宴会をしながら行った句会です。


まず、参加者が俳句を匿名で提出。

誰の俳句か分からない状況で、各人が互選で、それぞれ「天・地・人」(1位、2位、3位)を選び、寸評します。

ちなみに私たちは、「天」の賞品として、「天」に選んだ俳句を短冊(色紙)に書き、選者から作者へプレゼントすることにしてします。

この短冊、もらえるとなると、これがなかなか嬉しいものなのです。


木曽路の句会では、私の作ったある俳句がYまもとさんとMやさかくんから「天」に選んでもらいました。

かつて櫛(くし)問屋だったという建物で詠んだ一句。

《櫛を買う妾と妻に秋の旅  Kばやし》

江戸時代、漆塗りの櫛は木曽みやげとしてよく売れたのだそうです。


ちなみにYまもとさんとMやさかくんからいただいた寸評は、以下のとおり。

「(歴史資料のように生活感がなく)ツマラナイ奈良井宿の町並みから、強引に色気を詠んだという『荒技』が見事」

「『妾』を『妻』より先に書いたセンスに感心」

有り難いお言葉をいただきました。


それにしても、こんな俳句が「天」で採られるなんて、ふざけた句会です(笑)。


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話は逸れます。

だいぶ前のことですが、JR有楽町駅を歩いていたときのこと。

国際フォーラム口に「相田みつを美術館」がありました。

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立て看板によると、「みつをの文字力」という企画展が催されているとのこと。

イーゼルには、みつをのポエム。

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文字力に満ちているポエムを目で追っていきました。

《つまがいたって いいじゃないか にんげんだもの》

頭の中で、漢字変換する私。

《妻がいたって いいじゃないか 人間だもの》

言葉を噛みしめる私。

「妻がいたっていいじゃないか・・・」。

つぶやく私。

「人間だもの・・・」。

なるほど。

「妻がいたっていいじゃないか」なのです。

「妻がいたって、過ちを犯すぞ」。「妻がいたって、道を踏み外すぞ」。「だってそれが人間だもの!」と、開き直るようなステキな言葉。

火遊びに惹かれる人間の真理をポエムにしたのか、みつをは。

深いなあ、みつをは。

気合が入っているなあ、みつをは。

にんげんだなあ、みつをは。

私はポスターの前で、感服のあまり拍手をしてしまいました。


そして、私は噛みしめるようにもう一度ポエムを読み直しました。

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《つまづいたって いいじゃないか にんげんだもの》

ん?

目をこする私。

《つまづいたって》?

なんと「つまがいたって」ではなく「つまづいたって」だったのです。

そっか〜「つまずいたって」かあ。

なーんだ・・・。

当たり前じゃん・・・。

普通じゃん・・・。


私は踵を返して、有楽町駅をあとにしました。

(みつを先生、読み間違えてごめんなさい)


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で、私の俳句《櫛を買う妾と妻に秋の旅》の話に戻します。

YまもとさんとMやさかくんが「天」に選んでくれた珍句です。

賞品として、YまもとさんとMやさかくんが短冊に《櫛を買う妾と妻に秋の旅》と書き、私にプレゼントしてくれました。

帰宅し、その短冊を片付けていると、おかしな発見をしました。

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左:Yまもとさんが書いた短冊/右:Mやさかくんが書いた短冊


Yまもとさんの短冊をじっくりと眺めると・・・。

《櫛を買う妾と妾に秋の旅》

そうなんです、「妾と妾に」と書いてあったのです!

相田みつをのときと同じように、見間違えたのかと思い、目をこらしてみたのですが、本当に「妾と妾」でした。

となると、妻には櫛を買っていかないということになります。

しかも、妾を二人抱えているということになります。

へたをしたら、櫛を買ってやった妾が二人なだけで、妾はもっと大勢いるのかもしれないぞ。

これはタイヘンだ。

これはドン・ファンだ。


はたしてYまもとさんは酒を飲みながら短冊を書いたため、書き間違えただけなのだろうか。

それとも《櫛を買う妾と妻に秋の旅》よりも《櫛を買う妾と妾に秋の旅》のほうが優れていると添削してくれたのだろうか。


確かに《櫛を買う妾と妾に秋の旅》のほうが、より際どく、濃い味付けの俳句になります。

つまり、妾二人に櫛を買っちゃうのも「にんげんだもの」ということです。

妻には櫛を買わない、それも「にんげんだもの」なんです。

「にんげん」について考えてしまった秋の夜長です。
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台風一過。

長野県、中山道の木曽へ吟行に行きました。

吟行のメンバーは、大学のサークルゆかりの仲間(Hまくん、Mやさかくん)と、長野市の老舗和菓子屋のYまもとさんと電気屋のKぼさん、それと私の計5人。


木曽路には、風情のある中山道の宿場がいくつかあります。

図らずも、前々回の吟行が軽井沢、前回の吟行が姨捨、で今回が木曽という、どれも中山道沿いの旅行です。


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台風の猛威が去って、ぎりぎりまで吟行を決行するか延期するかで悩みました。

安否確認をして、句会のメンバーは運良く無事だったということが分かり、「それじゃあ行くか」。


まずは、奈良井宿へ。

木曽路は秋晴れです。

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古い町並みが当時のまま残っている珍しい宿場です。
観光シーズンにもかかわらず大雨のあとだったせいか歩いている人は少なかったように思います。


この数日で、急速に秋めいてきました。

日なたを選んで、ぞろぞろ5人で歩きます。

まずは、挨拶の一句。

《秋の日を背中に受けて奈良井宿》


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「中乗りさん」というのは、木曽の銘酒です。

木曽川で材木を運ぶために、イカダに乗る人を「中乗りさん」と呼ぶそうです。

木曽節に「♪木曽のな〜、木曽の中乗りさんは、ナンジャラホイ♪」という一節がありますね。

こんな日に句会を決行している我々の「どうでもいいぜ、行っちまえ!」という気持ちを、イカダの上の「中乗りさん」に託して、やけくその一句ができました。

《台風一過中乗りさんはナンジャラホイ!》


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私の俳句の特徴は、ケレン味のみ(まったく深みのないことでも定評があります)。

私は「俳句」という短刀を振り回し、美しい町並みからケレン味を切り取って句作することにしたのです。

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イメージ図(映画「緋牡丹博徒」より)


ちなみに奈良井宿は、みごとに整理整頓され生活臭が感じられない場所でした。

ケレン味を重視して句作する私にとって、映画のセットのような町並みは、俳句を作りづらい環境です。


奈良井宿を散策していると、いまも泊まれる旅籠(民宿)を何軒か発見しました。

旅籠に泊まったであろう無頼の旅人の姿を想像して、一句。

《夜寒し枕元には仕込み杖》

ちょっと、作為がありすぎましたかね。


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漆塗りの櫛(くし)問屋だった建物を見学しました。

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むかしから木曽は材木の大産地で、木工製品の製造でも知られています。

その中でも、漆塗りの櫛は、木曽みやげとして一世を風靡した銘品だったとか。

この櫛問屋は、製造から販売まで一貫して行い、財をなしたのだそうです。

ここで、一句。

《櫛を買う妾と妻に秋の旅》

妾を先にしたというのがポイントです。


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奈良井宿の中には、お寺が何軒もありました。

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その中に、「マリア地蔵」と呼ばれる首のないお地蔵様を祀っているお寺もありました。

隠れキリシタンがお参りした名残です。


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続いて、「二百地蔵」を見学。

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集落に点在していた地蔵を、集めた場所なのだそうです。

すると、あやしげな爺さんが近づいてきて「オレが案内してやるずら」。

ズタズタで泥で汚れたパジャマのような服を着て、互い違いのサンダルを履いた爺さんの風体を見て、いぶかしがる私たち。

すると、爺さん「カネはいらねえずら」。


爺さんのガイドは、いい加減なもので、「この石像は古いものみてぇずら。よく分からねぇが」だの「この小屋で女衆は集会したそうだ。知らねぇが」だの、あやふやな情報ばかり。

難しそうな顔で散策しているYまもとさんに対しては、「ヒゲの先生は何の先生ずら?」と、Yまもとさんを学者か何かと誤解している様子。

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さらに「先生、この石碑には何て書いてあるんずら?」と逆質問する始末です。


ただ、爺さんの言葉の中で、ひとつ心に残ったものがありました。

素朴な地蔵たちを前にして、「昔の娘たちは、身寄りのないところへ嫁にきて、こき使われたんじゃねぇのかなあ。話し相手もいねぇし。だから、ふるさとに電話をするような気持ちでお地蔵さんにお参りしたんじゃねぇかとオレは思うずら」。

お地蔵様は、身寄りのない娘にとって、故郷に繋がる公衆電話のようなものだったという話に、かつての信仰が実感でき、偲ばれたのです。


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奈良井宿には、木の桟橋が架かっています。

そのわきには、かつて走っていたSLが展示されていました。

いまは、木曽路を「特急しなの」が走っていますが、数十年前は汽車が走っていたのです。

《赤とんぼ鞄に座り汽車を待つ》

「男はつらいよ」の寅さんを思い浮かべて、詠んだ一句。


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夕方。

奈良井宿を離れて、「寝覚めの床」へ。

木曽川にある奇岩の景勝地で、浦島太郎や役行者の伝説が残り、松尾芭蕉が訪れたことでも知られています。

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寝覚めの床。

白くうつくしい奇岩から転落すると、エメラルド色の木曽川に真っ逆さま。

ここで、一句。

《新豆腐崩して食べて寝覚めの床》

白い岩を、ダシに浮かぶ豆腐に見立ててみました。


芭蕉の句碑もありました。

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《昼顔に昼寝せうもの床の山 芭蕉》


庭を掃くおばあさんに話しかけると、松尾芭蕉の「更級紀行」を熟読している市井の学者でした。

二百地蔵の爺さんとは真逆で、控えめに信憑性のあるガイドをしてくれました。

いわく、この芭蕉の句は「寝覚めの床」で詠んだものではないが、芭蕉の弟子たちが「寝覚めの床」にふさわしい句であると言ったためこの地に句碑ができたという話。

いわく、芭蕉は中山道を歩いたのか、旧道を歩いたのか、諸説あるという話。


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盛りだくさんの散策を終えて、句会の会場である山奥の民宿へ。

台風一過で、私たち以外の宿泊客はすべてキャンセル。民宿は貸し切りでした。

囲炉裏にあたり、缶ビールを飲みながら句会はスタート。

匿名で俳句を提出。互選でそれぞれが天・地・人・並・並・並の6句選句し、講評します。

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句会の様子 イメージ写真(映画「緋牡丹博徒」より)


制限時間の中で、6句提出します。

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制限時間をオーバーして提出すると、こうなります(映画「緋牡丹博徒」より)。


選句をし、講評をします。

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熱燗をチビチビ、炉端焼きをパクパク。いつの間にやら宴もたけなわ。

ありがたいことに、私の提出した句は、それぞれそれなりに点数をもらいました。


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(おまけ)

私が選んだ他の皆さんの句

《先生は何の先生ずら野分  Mやさか》

怪しい老ガイドのズッコケ感。


《赤とんぼ十字架として寺に舞ふ  Mやさか》

マリア地蔵の景色。


《浦島の夢か奇怪なモニュメント  Hま》

寝覚の床の浦島太郎伝説。


《秋暮るるマリオゲームで筋肉痛  Yまもと》

寝覚の床での岩から岩へ飛び移るときの実感。


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二次会は、塩尻の赤ワイン、白ワイン、日本酒の中乗りさんを、注いだり注がれたり。

寝覚の床でマリオジャンプしたにもかかわらずYまもとさんはハイペースで飲み、案の定「お先におやすみ」。

Kぼさんと、Mやさかくん、Hまくんとはあれこれ楽しく夜長の長話。

とはいえ我々も、台風一過で頭も体も疲労困憊。

健全に「おやすみなさい」。




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長野市の老舗和菓子屋・朝日堂にて句会をすることになりました。
参加者はいつもの6名(メール参加や選句だけ参加を含めて)。

今回の句会は趣向を少し変えてみました。
一人につき、漢字1文字を題として出してもらいます。
6人なので漢字6文字。
句会までに宿題として、あらかじめ6つの漢字を含んだ俳句を作ります。
句会はそれぞれが匿名で6句を投句するところからスタートです。

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話は変わりますが、少し前のこと。
「実録外伝 大阪電撃作戦」(東映)を見ていました。
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エンディングは、親分の前に子分たちが横一列に並び、詫びを入れるというシーン。
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いっせいに詰めた小指を親分に差し出します・・・。
このシーンで、映画はオシマイ!

この衝撃的なカットが脳裏から離れず、私は句会のお題を《指》にしました。

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ちなみに、
Mやさかくんから出された題は《水》。
「たまたま、水曜日だったから」とのこと。

Hまくんから出された題は《光》。
「今年の歌会始の題が《光》だったから」。

Yまもとさんは《道》。
「いろんな《道》があるから面白いでしょ?」。
ちなみにYまもとさんの趣味は散歩です。

Kぼさんは《転》。
Aしざわさんは《空》。
そして私は《指》。

これで題が揃いました。
《水》《光》《道》《転》《空》《指》。

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さて、句作です。
私が投句した俳句を紹介します。

《水》
「花粉症わが世はすべて水彩画」

《光》
「満室の文字光る路地春の闇」

《道》
「蝶高くえっさほいさ中山道」

《転》
「転々と北へテキ屋と春祭り」

《空》
「托鉢の空っぽのざる花吹雪」

ここまではスイスイ俳句ができました。
残るは私の出した《指》なのですが、これがなかなかできず、タイムリミット直前に苦し紛れに一句ひねり出すことに。
《指》
「よもぎ餅小指ない手が丸めゆく」

これは完璧に句会の直前に観た「実録外伝 大阪電撃作戦」の悪影響。
小指を失った男の第二の人生を想像して詠んでしまったのです。

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さて、句会です。
メールで参加したメンバーを含めて6人。
Kばやし(私)、Yまもとさん(朝日堂のご主人)、Kぼさん(電気屋のご主人)、それと大学の仲間であるHまくん、Mやさかくん、Aしざわさん。
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朝日堂の和菓子工場で、ワイン、焼酎、ウイスキーを飲みながらの句会。

匿名で俳句を提出し、互選でそれぞれが天・地・人・並・並・並の6句選句し、講評します。
結果は写真のとおり。
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私の提出した句は、それぞれそれなりに点数をもらいました。
嬉しいものですね。
ただ、当然といえば当然なのですが《よもぎ餅小指ない手が丸めゆく》には点数が入りませんでした。
やっぱりなー。

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宴もたけなわ。
遠慮なく、Kぼさん提供のお酒をガブガブ。おつまみをパクパク。
そして、Yまもとさんの搗いたお餅をいただきます。
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お餅にわかさぎの佃煮を乗せて食べました。
焼きたてのお餅に、甘じょっぱいわかさぎがよく合います。
「いちご大福があるくらいだから、わかさぎ大福を販売するべきですよ」

冗談を言いながら、そのとき私は、「やっぱり魚だよな」と思ったのです。
小指を失った男の第二の人生は、和菓子(よもぎ餅)より「やっぱり魚だよな」。

《指》
「とらふぐを小指ない手がさばきゆく」

これならどうだっただろうか。
(ま、そもそも詰めた小指という発想から離れた方がいいのかもしれませんが)

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(おまけ)
私が選句したほかの皆さまの俳句について。

・天
「春の宵転んで天を幾星霜」(Yまもと)
転ぶという一瞬のデキコトから夜空(宇宙)の無限の時間を感じるという、「一瞬と無限の対比が面白いと思いました」と私が言うと、
Kぼさんが「(Yまもとさんが)酔って転んで骨折したっていうただの実話だよ。店の敷地内で転んで骨折したもんだから、そのあと図々しく労災を請求して、当然却下されたっていう後日談を知っているからとても選ぶような気持ちになれない!」
ごもっとも。

・地
「また婆サは道で狐火踏む話」(Hま)
遠野物語のような雰囲気。その昔、年寄りの女性はよく憑かれたという話を思い出しました。
この句を「天」にしたMやさかくんは「老老介護の風景が目に浮かびました」。
感じ方は違うものです。

・人
「裏窓を放てば空があって春」(Mやさか)
この日、一番評価が集中した句。

・並
「結婚は雪崩のようで春の水」(Mやさか)
結婚を経験した人は軒並み点数を入れていました。
雪崩に巻き込まれたら、どうしようもないものです。

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句会は無事、終了。
YまもとさんとKぼさんの口論をつまみに酒をいただき、泥酔して帰宅しました。
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2018年の新語流行語大賞のノミネートが発表されました。
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なぜ、流行語大賞なんていうものが騒がれるのか。
それは句会と同じような楽しさがあるからだと私は思います。
句会の醍醐味のひとつは、いくつもの俳句から「いいなあ」と思ったものを選句し講評をする面白さ。
流行語大賞が騒がれる理由も、大賞を予想(選句)して、審査員とセンスを比較(講評)して楽しむ句会のような遊びと似ているからだと思います。

ちなみに、今年の新語流行語大賞のノミネートは、以下の30語。
No.01あおり運転
No.02悪質タックル
No.03eスポーツ
No.04(大迫)半端ないって
No.05おっさんずラブ
No.06GAFA(ガーファ)
No.07仮想通貨/ダークウェブ
No.08金足農旋風
No.09カメ止め
No.10君たちはどう生きるか
No.11筋肉は裏切らない
No.12グレイヘア
No.13計画運休
No.14高プロ(高度プロフェッショナル制度)
No.15ご飯論法
No.16災害級の暑さ
No.17時短ハラスメント(ジタハラ)
No.18首相案件
No.19翔タイム
No.20スーパーボランティア
No.21そだねー
No.22ダサかっこいい/U.S.A.
No.23TikTok
No.24なおみ節
No.25奈良判定
No.26ひょっこりはん
No.27ブラックアウト
No.28ボーっと生きてんじゃねえよ!
No.29#MeToo
No.30もぐもぐタイム

あなたの天・地・人はどの言葉ですか?

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話は変わります。
先日、上野を散策したときのこと。

上野公園から不忍池へ向かう路地に、ピンク映画館があります。
かつては薄暗い路地で怪しげな雰囲気を醸し出していたため近寄りがたかった記憶があります。
久しぶりに前を通ると、そのピンク映画館の前は明るく開けていて「日本シリーズのパブリックビュー」までしている様子。
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記念撮影ができるパネルまでありました。
ピンク映画館も時代とともに変わります。

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私の住んでいる長野市の場末にも、数年前までピンク映画館がありました。
当時から営業しているのかどうか分からない雰囲気ではありましたが、毎週、公開作品のポスターが更新されていたので、営業していたのでしょう。

ピンク映画館のある路地は私の散歩コースでした。
上映されている映画の看板を眺めるのが散歩の楽しみでもありました。
ピンク映画のタイトルは、爆発力があるのにどこか趣きがあり、看板を眺めては感心していた私。
数年前まで私は日記をつけており、感心したタイトルについては日記帳にこつこつメモを残していたのです。

私のメモから秀逸なピンク映画のタイトルをいくつか紹介します。

No.01炎の女体鑑定人
No.02ヘルパーの時間 助平な訪問
No.03絶倫義父 初七日喪服妻
No.04隣の三姉妹 やりくらべ
No.05 熟女の股ぐら焦らされて号泣
No.06背徳同窓会 熟女数珠つなぎ
No.07義母と襦袢娘
No.08質屋若女将 名器貸し
No.09夜のタイ語教室
No.10痴漢したけりゃ地獄でやりな!女痴漢捜査官バストで御用!
No.11サイコレイプ
No.12熟れ妻狩り
No.13人妻旅行 しっとり乱れ貝
No.14痴漢電車 とろける夢タッチ!
No.15ウラ生け花とはナニか?
No.16通夜の喪服妻 僧侶にもてあそばれて・・・
No.17暴虐白衣 下半身処方箋
No.18三十路・四十路・五十路 熟れて食べごろ ~灰になるまで昇り続けて終わらない~
No.19肉体婚活 寝てみて味見
No.20絶倫義父の下半身 ~いやん、お義父さま、彼より強いなんて~

あなたの天・地・人はどれですか?
破壊力、わびさび、韻律、上句と下句の取り合わせの妙、造語、比喩、謎解きのような分からないタイトル・・・、
どれもこれも魅力的で大賞を選ぶのが難しいくらい素晴らしい俳句、いや、ピンク映画のタイトルではありませんか。
(私の天・地・人は、波紋を呼んでもいけませんので発表は控えます)

いまはなき長野のピンク映画。
一度、入っておけば良かったなあ。

もはや、じめじめした映画館のかげも形もありません。
いまは日当たりのよい駐車場になっています。
 

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