カテゴリ: 酒
新潟出張2(酒場と半藤一利)
出張先の長岡の街をふらふら歩きながら、どこの居酒屋へ入ろうかと考えていました。
居酒屋探しのポイントは、若者の嬌声が聞こえてこないこと、店名がダジャレやキラキラネームでないこと、ズタズタでもいいから古くからやっていそうなお店であること、あたりでしょうか。
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良さそうな感じの居酒屋を見つけ、入ることにしました。
10メートルほどの長いカウンター。
その中にはガラガラ声の女将さん(妙齢)。
「どーぞー」と、女将さんに促されて私はカウンターの奥に座りました。
遅い時間だったこともあり、先客は一組だけ。
「じゃあ、生ビールください」
言うや否や、「どーぞー」と、生ビールがカウンター越しにドン!
持ってきた新聞を広げてビールを飲み続けます。
私「注文いいですか?」
女将「どーぞー」
私「おすすめの日本酒をください。それと、ほやと氷下魚(こまい)をお願いします」
(ほやと氷下魚(こまい)という、イメージできないつまみを注文してみました)
ほかに客のいない店を見渡すと、壁に気になる色紙が掛けられていました。
私「この色紙、写真撮ってもいいですか?」
女将「どーぞー」
《十字路におんな待つ宵雪のふる 半藤一利》
作家であり歴史探偵、また元文藝春秋編集長として知られる半藤一利さんの色紙を発見したのです。
半藤さんの俳句を眺めて一献。贅沢ですね。
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6月というのに肌寒い今日のような夜は、やっぱり日本酒でしょう。
女将「おまちどう」
半藤さんは江戸っ子のはずですが、確か、長岡にも縁があると何かで読んだ記憶があった私。
日本酒をちびちび飲みながら、
私「半藤さんは戦争中、長岡に疎開していたんですっけ?それとも、旧制長岡高等学校の出身者ですっけ?」
女将「疎開ですよ」
疎開のほうだったか。もし旧制長岡高校の出身者だったら、丸谷才一や野坂昭如と同窓生ということになったのですが。
女将さんいわく、実は、半藤一利がこの居酒屋に来店したことはないようです。
年配の常連さんが半藤さんと昵懇だったため、色紙に一筆をお願いしたそうです。
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私「南蛮えびの刺身と、日本酒をもう一杯ください」
女将「どーぞー」
女将さんとの話題は、半藤一利の奥様について。
女将「半藤さんの奥様の末利子さん、夏目漱石のお孫さんね。エッセイを書いてらっしゃる方いますよね」
「ええ」と、私は南蛮えびの頭のミソを吸いながら、頷きます。
女将「末利子さんも長岡に疎開していたんですよ。末利子さんのお母さんが夏目漱石の娘。で、末利子さんのお父さんが松岡譲という小説家」
私「ほう」
女将「松岡譲が長岡の人なんですよ」
父(松岡譲)の縁で、のちに半藤さんの奥様になる末利子さんも長岡に疎開していたのだとか。
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客は私だけ。
長いカウンターの隅を見ると、店員さん(妙齢女性)がビールをガブガブ飲んでいました。
そろそろ帰ろうかと席を立とうとすると、日本酒のポスターが目に入りました。
そういえば山本五十六も長岡の人でした。
「五十六」の題字を書いているのは、加山雄三のようです。
そういえば、加山雄三は、半藤一利原作の「日本のいちばん長い日」にアナウンサー役で出演していましたね。
「五十六」は、次に来たとき飲むことにして、席を立ちました。
「お会計お願いします。また来ます」
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(おまけ)
帰り道。ほろ酔いでふわふわ長岡駅前をとおると、長岡出身の著名人のパネルがありました。
諏訪旅行3(神長官守矢資料館と戦国武将)
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新鮮なホタテをみそで味付けをし、貝殻の上で卵でとじた料理です。