だいぶ前のこと。

永平寺へ行きました。

曹洞宗(禅宗)の総本山として知られています。

何回か来ているのですが、永平寺は相変わらず、欲望を喚起する外部の刺激をシャットアウトしている要塞のようでした。


「生死の覚悟」(高村薫・南直哉)という本で、僧侶の南直哉さん(永平寺に19年もいた)が言うには、

《永平寺の一年目は、迷ったり考えたりをさせないようなシステムになっています。/(修行僧は)目がキラキラしてくる。/金や異性、地位といった迷いの根本となるようなことを考えなくて済む》のだとか。

(もちろん、それに甘えてはいけないそうですが)


確かに、人が苦しむのは欲があるからなんですよね。

コマーシャルの嵐の中で生きていると、苦しくなるのも当然な気がします。

永平寺は欲をコントロールする技術を学ぶ場所なのでしょうか。


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天井画を楽しめる大座敷もありました。


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お堂。


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余談ですが、

私の友人(※巨漢)は高校生のころからアイドル、アニメ、ネットに溺れ、食欲に任せてパクパクパクパク唐揚げだのポテトだのを貪っていたため、彼の両親は心配し、1週間ほど永平寺に叩き込んだのだとか。

しかし高校生だった彼は、たとえ座禅をしていても、アイドルや色欲に任せた妄想が頭から離れなかったと言っていました。


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永平寺の売店には、購買欲を喚起するグッズなど売っているはずはありません。

ゆるキャラなどもってのほか。徹底ぶり、さすがです。

唯一、私の購買欲をそそった商品が、こちらのTシャツ。

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「超我」

買いませんでしたが。


同じ宗教でも、神道の聖地である三峯山へ行ったときは、こんなにポップなTシャツが販売されていました。

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「百発的中 MITSUMINE」

姿勢の違いを実感しました。


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道元禅師(中村勘九郎 「禅ZEN」より)

なんかやっぱりマジメそうな雰囲気。


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その一ヶ月ほどあとのこと。

身延山へ行ってきました。

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身延山久遠寺は、日蓮宗の本山でもあります。


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ところで、

「映画 小三治」というドキュメンタリー映画のDVDを見返しました。

柳家小三治さんに密着したドキュメンタリーです。

その中に、盟友の入船亭扇橋と小三治が、温泉宿に行くというシーンがあります。

二人は柳家小さんの兄弟弟子でもあり、やなぎ句会の同人でもあります。

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(右:小三治、左:船橋)

小三治「おい、今度の落語会で『鰍沢』をやってくれよ」

扇橋「やらないよ」

小三治「頼むから、『鰍沢』やってくれよ」

扇橋「それより小三治、浴衣がはだけて、しどけなくていいよ」

小三治「ばか」


「鰍沢」というのは落語のネタですが、山梨県の山奥にある地名でもあります。

身延山はその鰍沢の先にある日蓮宗の聖地です。


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身延山も巨大なお寺で、裏の駐車場からはロープウェイで上がれるようになっています。

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信者の方たちがお参り(講?)に来ていました。


地下には宝物館があり、その前には、写真パネルがありました。

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妙くん

お題目の「南無妙法蓮華経」から来ているものと思われます。


売店へも行ってみました。

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みのぶくん みのぶさん


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こぞうくん


楽しいグッズがたくさんありましたよ。


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「映画 小三治」のクライマックスは、小三治さんが「鰍沢」を演じるシーンです。


ちなみに「鰍沢」はこんな噺です。

《鰍沢という山梨の在で大雪に遭い、道に迷った旅人。

偶然、一軒家の灯りを見つけ、宿を頼むことにしました。

そこには美女がおり、こころよく旅人を招きいれたのですが、その女は旅人を殺しカネを盗ろうという魂胆。

女の本心に気付いた旅人は、一軒家から抜け出し、大雪の中を這って逃げるのです。

女は銃を持って追いかけてきます。

必死で逃げる旅人の目の前には崖。

崖の真下には急流。

うしろからは銃を持って追いかけてくる女。

絶体絶命。

すると、ガラガラガラガラ!

雪が崩れて、旅人は谷底へ転落します。

「南無妙法蓮華経!」

川には材木を運ぶためのイカダが浮いていました。

旅人はその上に落下したのです。

「助かった!お祖師様のご利益。お材木(お題目)のおかげ」》


その旅人は、身延山へお参りした帰りだったのです。

お祖師様というのは、日蓮聖人のこと。

お題目は「南無妙法蓮華経」のことです。


昔の人は、殺されそうになりながら身延山へ苦労してお参りに行ったのでしょう。

いまや、たいへんな山道も車でスイスイ上っていけますし、宝物館や写経体験、売店にはグッズもあり、楽しめるようになっています。


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お祖師様(萬屋錦之介「日蓮」より)
錦ちゃんの過剰な演技に、身延山のサービス精神も得心できました。


永平寺も久遠寺へ行き、お寺の違いを感じるというのも楽しみのひとつだと気がつきました。


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おまけ

http://kebayshi.blog.jp/archives/1070315576.html

(映画「禅ZEN」に関する記事)


http://kebayshi.blog.jp/archives/1074620688.html

(映画「日蓮」に関する記事)