倍賞千恵子って、実績を考えると別格の大俳優であり大歌手ですね。

大物にもかかわらず、親しみやすく威厳を感じさせないことに、かえって驚いてしまいます。

 


「倍賞千恵子の現場」という本を読みました。

倍賞千恵子は演技論についても、大げさでない言葉でサラッと言います。

《役者に必要なものといえば、例えば、観察力かな。》


あるいは、

演技をするときでも歌うときでも、自分に酔わず冷静でなければならないそうで、

《もう一人の自分がいないと、やたらとお客さんのほうにこちらから出かけていく、というか、言ってみれば媚びを売ってしまうような歌い方になってしまいます。》

逆に、もう一人の自分がいると、

《自分をコントロールして、たとえばお客さんがふっと笑ったことに対する反応がすっとできる。私はこのままどんなことでもできてしまう。このままどこかに行ってしまうんじゃないかな、そう思うくらい》。

面白いですね。


また、《山田(洋次)さんがおっしゃるには「いい役者は、贅肉がない」》とのこと。

贅肉のない役者の例として、渥美清や高倉健や笠智衆を挙げていました。

内面に自信があれば、大げさな演技や余計な仕草を加えるような演技をしないという意味だろう、と言います。

演技の真髄は掴めそうで掴めないものですよね。


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ところで、

小諸の懐古園へ行ってきました。


小諸は「男はつらいよ サラダ記念日」のロケ地として知られており、懐古園には、いまは閉館してしまいましたが「小諸 寅さん会館」があったことで知られています。

(いまはなき「小諸 寅さん会館」には学生時代に何度か行きました)


「倍賞千恵子の現場」にも《渥美さんが大好きだった長野県の小諸》と書いていあるように、

渥美清は小諸に通い、小諸の人々と交流しました。


「男はつらいよ サラダ記念日」の中に、こんなシーンがあります。

島崎藤村の「千曲川旅情」の詩の一節《小諸なる、古城のほとり、雲白く、遊子(ゆうし)かなしむ》をめぐって、

女子大生役の三田寛子が「遊子って寅さんみたいな人のことをいうのね」と言うと、

寅さんは「オレみてえな意気地なしが勇士だなんて。でも、爆弾三勇士とか真田十勇士ってのはガキの頃ずいぶん憧れたなあ」などと答えて笑いを誘うシーンがありました。


ちなみに、

懐古園は小諸城の跡地です。

私は、懐古園(古城のほとり)を歩きつつ、寅さん(遊子)の気配を感じたのです。


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懐古園を散策します。

すると、そば屋を発見。

そば屋の入口には、


倍賞千恵子が来店したときの新聞記事が貼られていました。


また、

その店は、偶然にも生前渥美清が通っていたお店なのです。


店内には、来店したときの渥美清の写真が展示されています。


隠者のようなプライベートを送ったといわれる渥美清が、


ハガキの送り主のところに「寅次郎」と書くサービスに、意外な気持ちがしました。


とにもかくにも、

懐古園で寅さん(遊子)の気配を感じたのは、あながち筋違いではなかったのですね。 


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少し前のこと。

TBSラジオ「伊集院光とラジオと」のゲストに、倍賞千恵子が出演していました。 


久々に聞く倍賞千恵子の声は相変わらず品のある声でした。

親しみやすく、清楚で、可愛らしい人柄を感じながらインタビューを聞いていました。


「『男はつらいよ』で印象的なシーンは?」という興味深い質問に、

倍賞千恵子は、

失恋をした寅さんが旅に出る前の、別れのシーンだと答えました。

大雨の夜。薄暗いとらやの二階。

渥美清と倍賞千恵子は二人になります。


「寅さんとさくらを超えたどこか男と女、恋人のようなギリギリの線で演技をしていたような気がしますね」


倍賞千恵子からこういう言葉を聞くとギクッとしますね。


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「駅 STATION」という映画があります。


主演の高倉健は刑事役。倍賞千恵子は居酒屋のママ役。


この映画の中に、

倍賞千恵子と高倉健が、一夜を過ごすというシーンがあります。


海鳥が飛び立つ画面から、倍賞千恵子がベッドでうっとりしている画面へ変わるというカット割り。

(羽ばたく海鳥で官能を表現するんですね)


翌朝。

倍賞千恵子「声、大きくなかった?」

高倉健(だまって首を振る)

倍賞千恵子「(ホッとした表情で)前、言われたことがあったから」

高倉健「(倍賞千恵子に聞こえないような小さな声で)樺太まで聞こえるかと思ったぜ・・・」


この会話にも、ギクッとしましたよ。

(ちなみに、脚本は倉本聰)

近しい倍賞千恵子からこんな言葉を聞くとドキリとしますね。

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話を戻します。

倍賞千恵子が小諸のそば屋を訪れたのは、テレビ番組の撮影で渥美清の愛した土地を紹介するためにやって来たのだとか。


渥美清のハガキの文面にある「ありやとうござんした」のマネをして、


倍賞千恵子も「ありやとうごさんした」と自らのサインの横に書く茶目っ気。


倍賞千恵子は、76歳になるのだとか。

もっともっと映画に出てほしいなあ。
歌のコンサートにも行かなきゃ。
本を読んだり小諸へ行ったりして改めて思ったのです。

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おまけ1

余談ですが、金子兜太先生も来店されたようです。


金子兜太先生の来訪は、小諸は高浜虚子が疎開をしていた地であるのと無縁ではないでしょう。


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おまけ2
五社英雄の官能シーンについて