この春から、近所の大学の大学院・社会人コースで勉強することになりました。

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高校生のころ(中学生のころからだったかもしれませんが)私は、「男はつらいよ」シリーズにのめり込むような少年でした。
いま、「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」の、高校生のころに見たときの印象を思い出しています。

この映画の中で、
旅先で出会った女子大生(三田寛子)を探すために、寅さん(渥美清)が、彼女の通う早稲田大学に現れるというシーンがあります。
その女子大生を探しているうちに寅さんは、大学の誰もいない教室でうつらうつら居眠りをしてしまうのです。
すると、いつの間にか授業が始まり、学生だらけの教室の中で寅さんは目を覚ますのでした。

教授「質問のある人はいますか?」
寅さん「はい!」
教授「どうぞ」
寅さん「このご本(教科書)は、いかほど?」
(学生爆笑)

このシーンを見て、当時悩める高校生だった私は、大学はなんて自由なところなのだろうと驚いたものです。
寅さんのような人を排除しない大学の雰囲気というものに、それなりに屈折していた当時の私はいいなあと思った記憶があります。

三田寛子は短歌を趣味にしている学生という設定でした。
《寅さんが早稲田の杜にあらわれてやさしくなった午後の教室》

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この映画の影響か(?)私は大学へ進学をしました。
そして、再び、寅さんめいた社会人として大学院へまぎれ込むことになったのでした。

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数日前のこと。
私の参加する大学院の、社会人コースの開講式がありました。
大学のキャンパスの桜は満開に近く、春日和。
開講式は、私を含めて社会人が数名、先生や関係の方々が集まりました。

まずは、学部長からのお言葉。

続いて、
それなりに高い地位と思われる地方公務員の方からのご挨拶をいただきました。
その五十路のお役人は、挨拶の冒頭で、
「おめでとうございます。えー、突然ですが皆さんの緊張をほぐすために、ここで『謎かけ』を披露したいと思います」

『謎かけ』?どういうことだろうと耳を傾けた私。

五十路のお役人は慣れた口調で、
「『春爛漫の大学のキャンパス』と掛けまして『フーテンの寅さん』と解く。その心は・・・・・・、
どちらも『さくらが気になる』でしょう!」
ぽかーんとする私たち。
すると、お役人はもう一度、念を押すように、
「・・・・・・どちらも『桜が気になる』でしょう!!」と言い、表情をキリッと決めたのです。
しかし、
私たちは依然ぽかーんとしたまま。まばたきを繰り返していたのです。
この反応にお役人は苦笑いをしながら、
「いやあ、皆さんはまだお若いから『寅さん』なんて分からないかぁ、ハハハー」
そのとき・・・・・・、
寅さんファンの私は、ガチガチの作り笑いを浮かべていたのでした。

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「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」の中で、好きなシーンがあります。
荒川の土手に、寅さんと甥の満男(吉岡秀隆)が寝転がっているシーンです。

思春期になり進路について考え始めた満男が、寅さんにふいに尋ねます。
「おじさん、なんで勉強するのかな?」
すると、寅さんは、
「そういう難しいことは訊くなって言ったろう。
つまりあれだよ、ほら・・・、
人間長い間生きていればいろいろなことにぶつかるだろう。
な、そんなとき俺みたいに勉強していないヤツは、振ったサイコロの目で決めるとか、そのときの気分で決めるしかしょうがないんだよ。
ところが勉強したヤツは、自分の頭できちんと筋道を立てて、
はて、こういうときはどうしたらいいのかなと考えることができるんだ。
だからみんな大学へ行くんじゃないのか?そうだろう」

このシーンは、高校生だった私には印象深いものでした。

寅さんは立ち上がり、
「あー、久しぶりにきちんとしたことを考えたら頭痛くなっちゃった」ですって。
かっこいいな。

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社会人学生の期間は、1年です。
学生時代は文系だった私が、理系の社会人コースに入ってついていけるのか心配です。
また、実りのある1年になるでしょうか。

ちなみに、第一回目の大学院生たちと一緒の授業は、存外楽しいものでしたよ。