「男はつらいよ」の新作「おかえり寅さん」を映画館で見てきました。
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寅さんが現れただけで嬉しくて目頭が熱くなりました。

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話は変わりますが、
実家の、私が大学に行くまで過ごした部屋に久しぶりに入りました。

プロレスのポスターに交じって、渥美清のポスターが貼ってあり、机の上には渥美清のブロマイドが飾ってました。
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中学生の私は、プロレスと「男はつらいよ」に傾倒していました。
プロレスについて話せる友人はいましたが、「男はつらいよ」について話せる友人は誰ひとりおらず、思い出してみると寂しかったなあ。

当時の私は、寅さんの甥の満男(吉岡秀隆)の目線で常識から自由な寅さんを見て、いろんなことを感じたのだろうと思います。
渥美清が亡くなり「男はつらいよ」シリーズは終わりましたが、私はいまだに折々にDVDなどで「男はつらいよ」を見返しています。

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新作「おかえり寅さん」のあらすじ
《山田洋次監督による国民的人情喜劇「男はつらいよ」シリーズの50周年記念作品。/倍賞千恵子、前田吟、吉岡秀隆らに加え、シリーズの看板俳優であり、96年に亡くなった渥美清も出演。さらに、歴代マドンナからは後藤久美子、浅丘ルリ子と「男はつらいよ」でおなじみのキャストが顔をそろえる。柴又の帝釈天の参道にかつてあった団子屋「くるまや」は、現在はカフェに生まれ変わっていた。/サラリーマンから小説家に転進した満男(吉岡秀隆)の最新作のサイン会の行列の中に、満男の初恋の人で結婚の約束までしたイズミ(後藤久美子)の姿があった。》

小説家になった満男は、イズミではない女性と結婚をし、娘を授かります。
しかし満男の妻は病気で亡くなり、一人で娘を育てていました。
一方、イズミは国連の職員となり、フランスで家庭を築きながら多忙な日々を送っていました。

なんだか、吉岡秀隆と後藤久美子の実人生と絶妙に重なっています。

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満男は、くじけそうになったときどきに、おじさん(寅さん)のことを思い浮かべ、人生のピンチを乗り越えていきます。
物語のところどころで、「男はつらいよ」の過去のシーンが挟み込まれます。
満男を励ますように、在りし日の寅さんが現れ、寅さんの言葉が蘇るのです。

《フレー、フレー、みーつーお!》

《困ったことがあったらな、風に向かって俺の名前を呼べ》

お守りのような記憶です。

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「徹子の部屋」に山田洋次が出ていたので、見ていました。
山田洋次は、何年か前に奥様を亡くしたのだとか。

「おかえり寅さん」では、小説家の満男は妻を亡くしています。
孤独な満男は、山田洋次自身だったんだと「徹子の部屋」を見て気がつきました。
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山田洋次はインタビューで、「渥美さんなら、こう言ったんじゃないかなあ」とか、「渥美さんなら、こんな顔をしたんじゃないかなあ」なんてことを必ず言います。
ことあるごとに渥美清(寅さん)を思い浮かべる山田洋次は、寅さんの記憶に励まされている満男なのでした。

映画は、小説家の満男が、寅さんのことを小説に書いてみよう、というところで終わります。
「おかえり寅さん」は、山田洋次がもう一度渥美清(寅さん)を映画にするまでを描いた作品なのだと思いました。

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実家の私の部屋に「男はつらいよ」日めくりカレンダーが残っていました。
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中学生のころ、私は映画館へ行き一人で「男はつらいよ」を見ていたような少年でした。
「男はつらいよ」が好きなんて、恥ずかしくてクラスメイトには伝えていませんでした。

二十数年前。
映画館で「男はつらいよ」を見終えて外に出たとき、クラスメイトと出くわしてしまったことがありました。
そのとき私は、聞かれてもいないのに「『男はつらいよ』を見にきたんじゃないから!『サラリーマン専科』を見にきただけだから!」と強弁した記憶があります。
(「男はつらいよ」は「サラリーマン専科」(主演:三宅裕司)と二本立てだったのです)

いまなら「男はつらいよ」が好きだと堂々と言えるんですけどね。
というか、振り返ってみると「サラリーマン専科」のほうが「男はつらいよ」より恥ずかしいような気がするんですが。

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満男が寅さんに励まされて生きてきたように、山田洋次は渥美清のことを思い出しながら生きてきたんじゃないかと感じました。
そして私も「男はつらいよ」に背中を支えてもらっていたんだと気がつきました。