(続き)

仕事で、新潟へ行きました。
新潟で泊まり、翌日は長岡へ移動するという日程でした。

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ところで、
新潟が舞台の映画といえば、「越後つついし親不知」や「はなれ瞽女おりん」という
水上勉が原作の作品を思い浮かべます。

雪原を歩く瞽女(ごぜ)の一座
※瞽女は、盲目の女性放浪芸人

雪原を一列に進む瞽女たち

水上勉にすり込まれた私の新潟県のイメージは、

豪雪、
出稼ぎ、
あかぎれ、
間男、
強姦、
岸壁、
無理心中、
荒海、
盲目の旅芸人、
売春、
殺人・・・、

いやあスゴイところですね。
新潟は私好みのステキな県かもしれないと思ったのです。
やはり私は、
ディズニーランドより水上勉ランド(新潟)に行きたいタイプなのです。

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話は変わりますが、
新潟の和菓子屋さんを何軒か巡ってみました。

まずは、新潟市。
米どころだけに和菓子屋というよりも、団子屋や餅屋、米菓(せんべい)屋が多いという印象でした。
桜餅も小麦粉の焼き皮タイプでなく、もち米の道明寺タイプがメインに売られていたのには驚きました。
(一般的に、焼き皮は関東風、道明寺は関西風と言われています)
やはりこれも米どころゆえ、ということでしょうか。

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移動中に、笹団子を食べました。
(やはり米の粉でできています)
なんと、中身はあんこではなく、きんぴらごぼう。
よもぎのたっぷり入った米の生地に、しょっぱい具材。
意外に合うものですね。おいしくいただきました。

新潟の人が言うには、
「昔は砂糖は高価だったんで、本来の笹団子の姿は、中身は粒あんじゃなくおそらく惣菜だったんだと思いますよ」とのこと。
なるほど。

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続いて、長岡へ。
ここでも和菓子屋さんに入りました。
有名な「越乃雪本舗」へ寄りました。

長岡は新潟と違い、城下町ということもあるのでしょうか、団子よりも上生菓子(お茶菓子)を売っているお店が多いという印象を受けました。
文化の差ですね。

日本三大銘菓といわれる「越乃雪」。
箱を開けると、

お菓子の箱の中に入っていた栞によると、
《高杉晋作は亡くなる十日ほど前、今年の雪見はもうできないからと見舞いにもらった『越乃雪』を傍らに置いてあった松の盆栽にふりかけて雪見の名残をされたといわれています》とのこと。
キザですね。

越乃雪は、上品な淡い雪のようなお菓子でした。
口の中でスーッと溶けていきます。

※佐久間象山、河井継之助、明治天皇、岩倉具視、大隈重信、山本五十六らも食べたという由緒あるお菓子とのこと。

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趣味の菓子屋巡りをしているうちに、
水上勉に毒されたドロドロとした私の新潟観は大幅に修正が必要だと感じたのです。

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長岡のあとは、十日町、南魚沼に寄って、
長野へ戻るという日程。

豪雪地帯をドライブしていると、
「越乃雪」の淡雪は、「美化された雪」なのだと思いました。
行けども行けども雪また雪。

こういう風景を見ると、
水上勉の「厳しい新潟」も、それはそれで真実なのだと感じました。

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「はなれ瞽女おりん」という映画では、岩下志麻が、瞽女(盲目の旅芸人)であるおりんを演じます。
瞽女のしきたりとして、瞽女は男を知ってはならないのだそうです。
しかし、岩下志麻はそのタブーを犯してしまい、
旅芸人の一座から追放されてしまうのです。

やがて、
岩下志麻は惚れてしまった原田芳雄を探しに、旅に出ます。
長野の善光寺にたどり着き、
そこで、原田芳雄と再会するというストーリー。
(善光寺の仁王門)

新潟から長野にやってきた岩下志麻。

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雪深い新潟から長野へ。
図らずも私は、瞽女である岩下志麻と同じ道程を辿っていたのでした。